●作品によせて
「ミャオ族伝統衣装×奄美藍泥染」
ミャオ族は世界で最も衣服が多様な民族だと言われ、その民族衣装には、鮮やかで精緻な刺繍がたっぷりと施されている。そこには彼らミャオ族の歴史を通して築き上げられた、色彩感覚などの美意識が詰め込まれている。そして今回譲り受けたこの一着も、彼らの伝統に倣いつくられた無数の衣装のひとつではあるけれど、そこには匿名性よりも、この衣装づくりに関わった人の「個人的な」時間と物語が縫い込まれていることを感じる。
一見するとカラフルさが目を引くこの衣装が、奄美の伝統的な泥染めの手法によって、丹念に深く染められることで、精巧で美しいひと針ひと針の存在感を―あるいはちょっとしたブレをも―引き立たせる。真っ暗な夜空に浮かぶ星々、険しい森のなかの葉の雫。まるで彼らが見てきた甘美な自然の光景が、ここに映し出されているようだ。衣服が最も美しい瞬間は、たくさんの記憶が重なった末に、その記憶を引き受けた人によって着られたときだろう。
それでも敢えてこの一着を、壁にかけて眺めることにしたのは、絵画以上に絵画的な眺めが、ここに収められているからだ。
譲り受けたパーツ|衣装(タイ/ミャオ族/1970年代)
Parts used|Costume (Mien Tribe, Thailand, 1970s)
『Vacant』は2009年に永井祐介が「空間と場の関係を巡る」思考と実践のために立ち上げたSpace&Studio。同年から2019年までの10年間、原宿のプロジェクトスペース『Vacant』で、展覧会などのイベントのキュレーション、グラフィック・空間デザイン、併設していたショップやカフェスペースのディレクションを行う。
2021年10月に計7フロアの建物のインテリアデザインを、自身で手掛けた新たなスペース『Vacant/Centre』に拠点を移し、現在はそのCentreでのキュレーションと運営、2019年に立ち上げたプロダクトライン『Vacant/Multiple』、その他のクライアントワークを含む活動『Vacant/Works』の全てをひとりで行なっています。
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