木村亜津

●作品によせて

 

山口吉彦さんのコレクション、アマゾンの蝶。
お預かりした多様多種な蝶の翅を触るうちに、ふと、モルフォ蝶の眼状紋に目が留まりました。
「この部分を切り取ると眼があって顔に見える!」という発見があり、
今回の制作のテーマに関わる蝶の擬態について興味が湧きました。
この「顔に見える」という現象は一説(※)によると、
蝶や蛾が持っている不思議な模様は捕食者の視覚認知を騙すために進化してきた、とあります。
例えば、鳥の天敵(蛇や梟など)の外見の一部を取り入れた模様が蝶の翅に再現されており、
それを見た鳥が瞬間的に騙される、というようなことです。
自身の外見に他の生物の模様を取り入れるということは、私たちにとって不思議なことです。
それは生き残るための戦略であり、彼らの歴史と生活を想像することができるものなのかもしれません。
そのようなことに思いを馳せながら蝶の翅の不思議な模様を組み合わせて、
ミラーの中にだけ立ち現れる架空の生物を作りました。

 


 

 

※参考文献 フィリップハウス著「なぜ蝶は美しいのか」 参考文献の中で提唱されているサテュロス型擬態を参考にしましたが、
擬態の分類や進化については進化生物学の冨田秀一郎先生にアドバイスを頂きました。
現在、「ファンダメンタルズ」という科学と芸術を繋げる取り組みにて一緒に活動中です。

 

 

 

譲り受けたパーツ|蝶の羽(ブラジル・アマゾン地域)

 

 

 

 

 

木村 亜津 / キムラ アヅ
木村亜津(1986年・東京都出身)は植物や自然物をモチーフとして作品制作するアーティスト。
自然科学への関心を起点に、野外での観察や発見を作品に投影する試みを続けている。
https://azukimura.com/
https://www.instagram.com/azu.kimura/

 

 

 

※作品は全て展示、販売いたします。
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※作品は会期終了後にご郵送いたします。