カモナマイハウス 次世代につながるユーゴの家ができるまで/白井明大

第8回 空間がうまれる 家になっていく

詩人、文筆家、コピーライター。
日々の暮らしを詩にしたり、
ものづくりのいまを訪ねて人に会い、
文章を書いたり、広告のコピーを考えたり。
メールマガジン「サルビア通信」で詩とエッセイを連載中。
2009年秋から、詩とものづくりをテーマにした
「白井商店」をはじめる予定です。
詩集『心を縫う』(詩学社)、『くさまくら』(花神社)
共著『サルビア手づくり通信』(アスペクト)
LOVE49?呼びかけ人、日本現代詩人会会員。
http://www.mumeisyousetu.com/

第8回 空間がうまれる 家になっていく (2011.07.26)

 

 

ひとつぶのたね

ひとつぶの たねを じめんに うえる

ひとにぎりの つちを そのうえに かぶせる

ひとばん ねかせて あさ みずをあげる

ひとまずの あいだ ゆっくり まつ

ひとしきりの じかん すぎたころ

ひとつの めが つちから かおをだす

ひとつの いのちが うまれてくる

ひとは いのちに また みずをあげる

ひとつき ふたつき ひが たって

ひとも いのちも すくすく そだつ

ひととせ ふたとせ ときが すぎ

ひとも いのちも のびていく

第8回 空間がうまれる 家になっていく

 

ユーゴちんの家ができた。

できたての家はまだ人の住む場所になる前の、空間の素顔のままだったけれど、
それでもあちこちにユーゴちんらしさが込められていた。  
じぶんの手でつくったものや、あるとき突然出会って手に入れたものは、
しぜんとたった一つのものになる。家のエントランスには、どこでみつけてきたんだろう?
という古びた感じのする洗面台が備え付けてあるのだけれど、
その家に住む人の横顔をほうふつとさせる。

そしてエントランスの手前には、ルーバーという細長い白い柱が何本も立っているが、
その柱を植物がつたって上へ伸びていこうとする。
蔦や朝顔、ゴーヤー、きっといろんな草花が生い茂るのだろう。
そのルーバーがまっ白からあおあおとした緑へ変わるとき、
夏のつよい日射しをやわらげる天然のカーテンになるそう。  
風がそよぎ、花がゆれ、日があふれながら、部屋に心地よいすずしさをもたらす。
ユーゴちんの庭は、地面だけでなく、空中にも広がっていく。

入ってすぐの右手には、どこかでみたドアが。  
浴室へ続く入り口に、ユーゴ作のドアが取り付けられていた。
でもなんで逆さまなんだろう? きっとわざとだな。。

ガチャッと開けると、前回登場したモザイクの洗面台が現われる。
こんなきれいに仕上がったなんて! 一緒につくった者としては、やっぱりうれしい。
ドアも洗面台もじぶんの手のあとがグッと感じられるというのは、
住んでみるとどんな気持ちがするのだろう。親しみを感じるだろう。
家族もやっぱり、ユーゴちんらしいな、と毎朝顔を洗ったり、
歯をみがいたりしに来るたびに思うかもしれない。
思わなくても、肌で感じるにちがいない。
この家は、人とモノ(家)との距離感が、なんだか近い。

二階はこんな感じ。
床付近の壁には、雲状のラインが波打っている。
波なのか雲なのかと思ったけれど、あ、たしかユーゴちんは
「山稜のイメージ」とか言ってたような気も。  
続いていくこと。遠くまで望むこと。自然をまなざすこと。  
そんな思いが、静かに込められている。  
このラインはユーゴちん自身が描いて、職人さんにつくってもらったものだそう。

地下は、touta.のアトリエになる。広い。
作業のしやすさを考えて、柱を入れたくなかった、とのこと。
遠藤さんたちがあれこれと考えて、強度を保ちながら、ひろびろとした空間をかなえた賜物。
ここは、打ち合わせの最初の段階から、ユーゴちんがとってもこだわっていたポイント。  
まだなんにもないけれど、これからどっさりミシンや作業台や布やいろいろが運び込まれる。
ユーゴちんは本当に、昼も夜もたくさん、働く。
つくり手として、おかあさんとして。

素敵な空間ができあがるだろうな、と思っていたとおり、
ユーゴちんのカモナマイハウスは素晴らしい家。
ユーゴちんの思いや、遠藤さんの意匠が形になっている。  
ただ、家はできあがっただけでは、まだ家じゃない。
家族が暮らして、初めてみえてくるもの。  
僕はそれが知りたい。  
次世代につながる家。それっていったいなんだろう。  
現実の制約の中では、理想をぜんぶ実現できるわけじゃない。
だからこそ、よけい大事に思える。
制約という壁を乗り越えて、思いを形にできることが一つでも二つでもあったら、
それが次世代につながっていくんだと思う。
そこにユーゴちんらしさが、にじんでくるだろう。  
時間をかけて、ゆっくり、ゆっくりと。

(つづく)

写真・當麻妙

登場人物ユーゴ:クリエイター、touta.主宰、次世代まで繋がるような提案を…をコンセプトに活動中! 2003年、「イメージを覆すような布ナプキン」をmother dictionaryで連載。LOVE49?プロジェクト呼びかけ人。著書に『布ナプキン こころ、からだ、軽くなる』(ユーゴ著 産経新聞出版)、「アイヌ文化から大切なものを学びとる旅」(touta.)、「布ナプキンの本」(エスプレ)

遠藤幹子:建築家。1971年東京生まれ。東京芸術大学美術学部建築科修了。インテンショナリーズ勤務を経て、guesthouseを共同設立。その後オランダに渡り出産、berlageinstitute修了。スリランカを経て帰国し、2003年4月から東京で「Office Mikiko」をスタート。長女・アムは99年3月生まれ。

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