labour+laugh しあわせな労働について/竹脇虎彦

第1回 プロローグ

1963年東京生まれ 写真家・ガーデナー
1999年イングランド南部に移転。
より良い食材を求めてカントリーサイドのファームやガーデンを訪ねるうちに、
土から食べ物をつくることに憧れを募らせた。2000年よりマナーハウスのキッチンガーデンに通いボランティアで働きながら野菜づくりを学んだ。2004年から2007年まではイングランド南部フォレストロウにあるシュタイナースクール(Michael Hall School)のガーデナーとして野菜とハーブづくりに従事。
2007年に帰国後は茨城県の八郷に畑を借りて野菜・ハーブ・米をつくり、ナショナル麻布スーパーマーケットなどで販売。2010年より岩手県岩泉町にある中洞牧場内の耕作地で野菜・ハーブ・ベリー類の栽培に取り組んでいる。
著書:「イギリス オーガニック農園への旅」(産業編集センター刊)
http://www.biscuit.co.jp/tora.html

 

 

第1回 プロローグ 2011/05/06

もうずいぶんまえの話になりますが、 1999年にイングランド南部のブライトン
という海辺の街に引っ越しました。
半年かせいぜい1年、そこをベースにヨーロッパ各地の撮影をしようという思惑です。

ブライトンの街中からちょっと車で走るとカントリーサイドです。
ファームショップを営業しているファームがいくつかありました。
ぼくは食べることに対する興味旺盛で料理もするので、 ベストな食材を求めて
ファームショップにせっせと通いました。
ファームで買う食材はスーパーマーケットなどで買うものと較べて、
もちろんクオリティや値段も違うけれど、 いちばん違うのは、土を耕し、種を蒔き、草を刈って、 牛や鶏や羊を飼っている人がそこにいるということです。

つまり土と人とのつながりを感じることができるんですね。
それまであまり考えなかった想いが湧いてきました。
そういう仕事や生き方があるということが徐々に自分に迫ってきました。
もっと端的に言うと、ああいう大きな分厚い手を 自分も獲得したいという
憧れを抱いてしまったのですね。

程なくフォレストロウというビレッジのコミュニティペーパーで マナーハウスの
ガーデンがボランティアの研修生を募集している記事を見つけました。
「東京という大都会育ちの37歳、経験はまったくないけれど、
土から食べ物をつくることに憧れている」というような手紙を書きました。
数日して、「平日の朝6時から夕方6時まで、いつでも好きなだけ
ガーデンで時間を過ごすことを歓迎する」ということと
ガーデンへの道のりが記されたシンプルな返事が来ました。

そして、夏の終りの頃だったと思います、
はじめてそのガーデンで働いた日の帰り道での
今まで味わったことがないような爽やかな気分は今でも忘れていません。

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